知的財産、プライバシー、認証に関するルールづくり

 次に、ファイナンスや知的財産といったソフト面で、情報に係わる企業の方々がやりや
すい、伸びやすい状況をどうやって整備していくかというのが、二つ目の大事な仕事だと
思っています。
 アメリカではこの15年の間に情報通信分野での起業が、盛んとなり今や世界のマーケッ
トをリードするスケールにまで育ってきています。シーズベースで日本とアメリカにそれ
ほどの差があるのかというと、日本にだって同じようにたぶんシーズはあると思います。
しかしながら、日本の場合は売上が100億円位いになった後の成長がなかなか世界スケ
ールにまでいかないというところがあるようです。これは何が原因なのか、例えば、知的
財産の制度なのか、日本のファイナンスの制度なのか、税制なのか。私見を述べれば、金
融税制のところがいちばん大きいと思っていますが、いずれにせよ、せっかくシーズがあ
るのにベンチャー企業が育たないという現状は、やはり変えていかなければいけないと思
っています。
 例えば、株式の公開基準などはどんどん変えてはきていますが、それでは日本のベンチ
ャーキャピタルがアメリカのベンチャーキャピタルと同じような機能を果たしているか、
アメリカのベンチャーに貸すのと同じような態度で日本の銀行が貸しているか、というと
必ずしもそうはなっていない。従ってそういう優れた会社がちゃんと育っていく環境をつ
くるということが一つはいちばん大事であろう。そのために必要な金融ルール、財政ルー
ルというのを作っていかなければいけないと思っています。
  次も同じようにルールの話ですが、知的財産権、プライバシー、認証といったもののシ
ステムが、まだ情報時代、ネットワーク時代に合ったものになっていないような気がしま
す。
 要するにこの世界というのは、特に、ネットワークを前提にすると、先ほども申し上げ
ましたようにデファクトスタンダードというのが否応なしに形成されます。インテルのチ
ップはマーケットの8割、マイクムロソフトの「ウインドウズ」はマーケットの9割をと
っています。これは従来の独禁法の観点からいうと当然問題になっているはずのレベルで
すが、必ずしもマイクロソフト、やインテルだけではなくて、他にもいろんな問題になる
ケースが出てくるかもしれません。
 逆にいうと、知的財産の保護制度も、デジタルになればコピーコストは、ほとんどゼロ
になりますから、コピーコストがゼロの世界で果たしていろんなデジタルコンテンツの保
護の制度が今のままでいいのかという問題がある一方で、保護を強くしすぎると利用が伸
びない、利用者の権利が阻害をされるという面もあります。したがって両者のバランスを
適切に取っていくことが、従来にも増して重要になってきます。         
 一つ例を申し上げますと、日本の音楽著作権というのは非常に厳しく管理をされている
ことで有名です。文化庁の長官の指定する団体が音楽著作権に関しては集中管理を行って
いますが、これは今日本に一つしかありません。ということは独占で当然料金は高くなり
ます。例えば、今インターネットを使った音楽サービスの事業を始めようとすると、要求
される著作権料があまりにも高額ですから、とても事業の立ち上がり時期にやっていけな
い。仕方がないのでアメリカでコンピューターのサーバーを借りて音楽を送信するという
ことを始めています。
 これで何が起きるかというと、せっかくの日本で起業できた事業が、結局、アメリカの
企業によって行われ、雇用もアメリカで発生する。あるものを守ってやりたいというため
にやるのですが、逆に守り方がよくないと、角をためて牛を殺すということも起こってし
まう可能性があるという例です。必ずしも今の制度が悪いと申し上げているわけでなく、
保護と利用のバランスをうまく考えていかないと、ネットワークの上では国境というのは
従来よりもずっと軽い意味しか持ちませんから、デジタル化時代に本来であれば育つはず
の産業がどんどん海外に出ていってしまうといったことを申し上げている訳です。そうい
う意味で知的財産の問題、プライバシーの問題というのは、デジタル時代、情報化時代に
合った新しいルールを考えていかないといけないと思っています。

セキュリティ問題

 もう一つ、今後非常に大きな問題になりうるのは、セキュリティの問題です。     
 日本のメーカーでは、機械一つにアクセスするにも、また工場の入構管理などなかなか
厳しいことが通例ですが、どうもネットワークとなると今までのところ、ややセキュリテ
ィに対する関心が物理的なリスクに対する関心よりも低いような感じがいたします。現時
点で今インターネットに繋がっているコンピュータは、世界中に1500万台から、20
00万台あると言われています。サーバーベースですから、一つのコンピューターにLA
Nを張ったりして繋がっている端末が10台あるとすると、1台のコンピューター当たり
10人の人がそれにアクセスできるということになります。この数字を前提に考えますと、
皆さんのパソコンやコンピューターが仮にインターネットに繋がっているとすると、それ
は1億5000万人ないしは2億人の方とコンピューターが繋がっているというのと同じ
ことです。この中には絶対に悪い人間がいないというのは難しいと思います。
 このようなネットワーク環境において、ネットワークを利用した犯罪や不正なアクセス
等々、いわゆるセキュリティに問題のある事態というのは、非常に大きな問題です。東証
が去年コンピューターダウンで午前中の取引きが停止しましたが、あのストップによる日
本経済のロスは、おそらく金額にすると相当のものがあったはずです。同様な事態がネッ
トワーク犯罪や不正アクセスによって引き起こされない保証はどこにもありません。そう
いう意味でセキュリティ対策をより一層普及させていくことが非常に大きな仕事の一つだ
と思っています。



人材・教育問題



新規産業分野が成長するための生産要素