2.電子マネーの利用状況と市民の反応

 平成9年10月末までの参加モニター数は、2,670人。そのうち三鷹市民は、558人
で、三鷹市民カード機能を付加させた者が467人となっている。ロード金額は、6,184,
300円。利用状況については、6月末のトライアル開始から1,378件で、総額3,539
,700円。1件あたりの平均利用金額は、2,569円となっている。ICクレジット利用は、
10件で総額76,024円、平均利用金額は7,602円である。
 参加店舗の業種別利用では、物販が74%、飲食23%、ガソリンスタンド2%、その他1
%となっている。利用の特徴として、スーパー(食品)での利用が全体の約8割を占め、婦人
衣料等の単価の高い店舗での利用は少ないのが現状である。
 こうしたEMP実験結果をどう評価するのかは、未だに実験中でもあり、大変難しいところ
であるが、市民や商店、そしてマスコミはどのように受け止めているのだろうか。
 EMP実験は、通産省のPXプロジェクトの先陣を切ってスタートした実験であり、自治体
である三鷹市が協力参加している点でマスコミの注目が高く、新聞・雑誌の取材だけでなく、
NHKやCATVなどの映像メディアにも多数取り上げられてきた。この半年間で取材や講演
依頼だけでも約80にも及ぶ。この取材攻勢は、電子商取引という新たな社会システム構築に
向け、技術面・運営面での共通プラットホームの整備と新たなマーケット創出への期待が如何
に大きいかを伺わせた。同時に市民からの問い合せも多く、キャッシュレス時代到来を予感さ
せた。
 しかしながら、こうしたカード会社や銀行、コンピュータメーカー等産業界や市民の熱いま
なざしは、ほんの一握りの人々に限られており、一般消費者の関心は今一つ低いように思える。
実験当初にモニターとなった人々は、以前から情報通信分野に関心が高い、またはインターネ
ット上での電子決済が必要な人がほとんどであり、その人達の波が去ると、モニター募集や実
際の店舗での利用は、かなり苦しい展開を抱えている。
 その主要な要因として考えられるのが、一つには、電子マネーとは何か、そしてその必要性
が見えてこないことだろう。既に、一人で何枚ものカードを持っており実験とはいえ新規カー
ドの作成までに至らないことだ。二つには、電子マネーカードの利便性、安全性が見えてこな
い状況にあることだろう。三つには、需要と供給のバランス上での問題で、日頃利用している
店や利用したい店が参加していない、三鷹駅前が自分の買い物エリアではないなどの理由であ
る。
 しかしながら、実際に利用した市民の反応は上々である。一応に「思った以上に操作が早い、
待たない」「サインもいらないし、おつりを数える手間が省ける」「カード1枚にたくさんの
機能が盛り込まれていて、お財布の中がすっきりした」「暗証番号を入力しないとロードされ
ないので落としても安心できる」など電子マネーの使い勝手の良さを評価している。利用者の
中には、この3ヵ月で50回以上も利用した人もあり、電子マネー本来の利便性や安全性が認
知されれば、利用拡大が期待できる。
 一方で「入金機の設置場所が少ない」「2万円の限度額が小額で何回も入金しなくてはなら
ない」「どの店で使えるかわからない」「店員の機械操作に時間がかかる」等、実験に対する
不満も聞こえ、実用化までには大きなハードルが横たわっている。
 商店側からも、「機械の操作を覚えるのが大変」「思ったより利用客が少ない」「現金と比
べ、決済が複雑」という声と「操作は思った以上に簡単」「おつりの手間がいらない」「食品
を扱うので現金に触れないのがいい」等、電子マネーのメリット、デメリットの両面の声が聞
こえてくる。

3.行政カードは多機能型へ

 三鷹市民カードの作成・利用状況については、三鷹市民モニター658人のうち三鷹市民カ
ード機能を付加した者が467人と84%にも達しており、この割合は予想以上に高い。この
数字をみる限り、行政カードにその他の機能が一体化若くは複合化されることにあまり障害が
ないように思える。従って、今後の行政カードの方向として、行政機能、商店街のポイントカ
ード機能、クレジット機能等を含んだ多機能カードとしての利用の可能性が広がった。その際
には、今回の実験に付加した市民カード機能の他に図書カード、体育施設や生涯学習の講座予
約等ができる機能が加わることによって、さらに市民サービスが向上していくことだろう。

4.実験は始まったばかりだ

 電子マネーは、消費者の前にその姿を見せたばかりで、汎用性や安全性など様々な課題を含
んでいるが、今後の電子商取引の展開によって、市民生活の多様化に対応し、新しいニーズを
掘り起こし、新マーケットの出現で創造性のある情報産業の発展等経済の活性化、継続的成長
に極めて大きな役割を果たすことは間違いない。
 そこで三鷹市の実験を手始めとして、神戸・渋谷など今後全国で展開される大規模な電子商
取引実験を通じて、消費者に使いやすい簡便な機器やシステムの開発、標準化や相互運用性、
セキュリティ技術、プライバシー保護、取引や決済に関する新しいルールの構築が待ち望まれ
ている。その上で、初めて電子マネー実用化への本当のスタートラインにつくことになろう。
実験は始まったばかりである。

                 日本アイ・ビー・エム梶@官公庁システム事業部
                  HPC先進ネットワーク営業部 松井  登



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エレクトロニック・マーケット・プレイス(EMP)実証実験