4.「電子式銀行決済」について

(1)「電子式銀行決済」の位置付けと仕組み

「電子式銀行決済」は、「電子マネー」の「支払指図」型の「電子決済」と位置付けられ る。すなわち、インターネットのオープンネットワークを通じて「支払指図」を行い、既存 の決済システムを利用して振込処理を行う。「電子マネー」を取巻く諸条件が整っていない 現状下で、オープンネットワークを通した決済という社会的ニーズに答えるという点で、 現実的かつ効果的な方法であると考える。

(2) セキュリティ

セキュリティについては、「SECE・銀行版」を採用している。 消費者と商店は事前に「認証局」より取得した「認証書」にて相互正当性を確認し、決済 依頼についてはパスワードによる本人確認を行う。取引電文は「秘密鍵方式」(富士通製 RSA)と「共通鍵方式」(DES)の組合せにより暗号処理を実施している。消費者か らの決済依頼は銀行のペイメントサーバーに一旦蓄積しトランザクションを切断すること とし、外部からのホストシステムへの不正アクセスを排除している。 ここで特筆しておきたいのは「SECE」銀行取引ショッピング連動決済プロトコルの 2銀行モデルを採用している、ということである。2銀行モデルでは、基本的には消費者 と商店の口座が別々の銀行であっても対応が可能である(現状は両口座ともさくら銀行で 実験中)。1銀行モデル(消費者と商店の口座が同一銀行にあるもの)の実験例は多いが、 2銀行モデルを採用した実験は、本件の他に例がなく、CCCにおける「電子式銀行決済」 の特徴の一つといえる。

(3)「電子式銀行決済」の決済方式

決済方式としては@振込予約による都度決済方式(前払方式)とA1ヶ月まとめて口座 引落を行う月次一括払方式(後払方式)の二つの方式が利用可能である。どちらの方式を 採用するか、あるいは両方とも採用するかについては、各商店側で選択可能であり、また 商品毎に設定することも可能となっている。 また、商品の注文は原則として24時間365日可能である。 振込手数料については、現状では商店側負担となっており、振込1件につき105円を 翌月に一括で商店側口座から引落す仕組みとなっている。 @ 都度決済方式(前払方式) 本方式は、既存の決済システムの振込予約を用いたものである。 消費者口座からの商品購 入代金引落しは、商品注文後最初に到来する銀行営業日の午前7時に行われる。商店側口座 への入金はそれに続いて行われ、商店側は代金入金後(消費者口座と商店側口座が異なる銀 行にある場合は、全銀システムへの発信後)に注文状況を確認し、商品を発送する仕組み となっている。なお、商品の注文はしたものの、代金引落時点で残高不足となった場合に は、取引は不成立となり、商店側のリスクは発生しない。 また入金に際しては6桁のコードを振込人名の頭部にセットしており、商店側のマッチ ング作業が容易に行える仕組みとなっている。 A 月次一括払方式(後払方式) 本方式は既存の預金口座振替の仕組みを用いたもので、1ヶ月間の商品購入代金を、合計 で翌月10日(銀行休業日の場合はその翌日)に引落し、商店側口座に入金を行う。本方式で は代金回収の前に商品の発送を行う。継続的に発生するマイクロペイメントや、企業間取引 に有効な方式である。 本方式においても、振込人名の頭部に6桁のコードがセットされる。前述の都度決済方式 の場合には入金:注文が1:1であるのに対し、「月次一括払方式」の場合はその性格上、 1:nとなる。また、商店側が負担する振込の手数料についても、同一消費者からの代金 は合計で振込されるため、振込1件分の105円となる。

(4) CCCにおける「電子式銀行決済」の状況

CCCにおいての「電子式銀行決済」は本年10月13日にスタートし、現在プレ・モニ ターにより利用されている。一般モニターの募集も開始されており、近々に一般モニター による本格的な運用がスタート予定である。 インターネット上のバーチャルモールのショッピングの代金決済については、銀行振込が かなり利用されているのが実状であり、「電子式銀行決済」は消費者ニーズに合う方式と 考えられる。本方式が消費者に受け入れられるかどうかは、セキュリティに対する信頼性、 操作性に依存する部分も大きいと考えられるが、今後の本格的な運用が待たれるところで ある。 なお、現在はさくら銀行一行での運用であるが、10年2月には大和銀行の参加も決定し ており、CCCのモール活性化に貢献するものと考えられる。


(5) 「電子式銀行決済」を普及させるための課題

「電子式銀行決済」のプレ・モニターによる運用が始まって2ヶ月ほどであるが、その 中で普及のために必要ではないかと感じている項目について述べる。 @商品の在庫把握 バーチャルモールで良く売れるものとして、希少性の高い商品があるが、CCCの「電子 式銀行決済」では在庫数と注文数の連動はなく、在庫切れになる可能性がある。売れ筋商 品にこそ、「電子式銀行決済」を採用していただきたいものの、注文が殺到しそうな商品 には「電子式銀行決済」を採用しづらい、というジレンマが生じている。 在庫を確認しながら安心してショッピングできることが、消費者、商店の双方のニーズ の一つであり、今後の検討が必要であろう。 A 返品処理、クーリングオフ 基本的には消費者と商店との問題ではあるが、商店が「電子式銀行決済」を採用する上 で、ネックになる可能性がある。返品処理、クーリングオフが発生した場合、商店側にと ってはクレジット決済の方が、手軽に処理が可能である。 B 都度決済方式のリアルタイム化 都度決済方式の引落がリアルタイム化することにより、翌日以降の消費者の確認作業 が不要となる。残高照会等についても可能になれば、さらに消費者側の利便性が高まり、 利用促進へとつながるのではないだろうか。 C CCC以外のバーチャルモールへの「電子式銀行決済」の提供 「電子式銀行決済」の普及のためには、より多くのバーチャルモール、商店で本方式を採 用してもらうことが必要である。消費者が、バーチャルモールあるいは商店毎に別々の決 済方法やソフトが必要な状況では、普及は困難である。より多くのバーチャルモール、商 店で利用できる環境を作ることが重要と考えられる。

5. 今後の電子マネーの行方と銀行の役割

  現状下で実現可能な「支払指図」による「電子決済」、すなわち「電子式銀行決済」の
ような方式が、はじめに一般化するのではないだろうか。その後、社会的インフラ整備の
進展に対応して、ICカード等を利用した電子現金が伸びてくるのではないだろうか。
  「電子マネー」がいかに普及していくかは、取引の安全性/利便性に負うところが大き
い。消費者・商店のニーズに応えるとともに、「電子マネー」普及による社会インフラの
コスト低減を図るためにも、電子マネーの担い手たるわれわれの、弛まぬ改善努力が不可
欠であると考える。


[参考文献]
・「デジタルマネーのすべて」 日経BP社
・「オフィスオートメーション」第36回 全国大会報告特集[1]
    〜「ECにおける決済処理と銀行の役割」(株)さくら銀行  沖雅直



「マルチメディアの社会的インパクト」



「電子マネー」について